こんにちは。ペダルノート 運営者の「アキ」です。
最近、サイクリングロードやすれ違うロードバイクを見ても、本当にディスクブレーキのモデルが増えましたよね。雨の日でもよく止まる安心感や、メカニカルで迫力のある見た目はやっぱり魅力的です。「愛着のある今のバイクを、どうにかしてディスクブレーキ化できないかな?」と考えるのは、サイクリストなら誰もが一度は通る道だと思います。私自身も、長年連れ添ったリムブレーキ車を近代化したくて、夜な夜なパーツを検索した経験があります。
でも、いざロードバイクのディスクブレーキ化について詳しく調べてみると、「後付けアダプターは危険」「費用が高すぎて新車が買える」「フレームの規格が合わない」といった難しい話ばかり出てきませんか? 結局どうすればいいのか分からず、そっとページを閉じてしまった経験がある方も多いはずです。実は、リムブレーキ車をディスクブレーキにする作業は単なるパーツ交換ではなく、自転車の骨格に関わる大きな変更であり、安易な方法に飛びつくと安全を脅かすリスクすらあります。
この記事では、そんな迷える方に向けて、リムブレーキ仕様のロードバイクをディスクブレーキ化するための現実的かつ安全な方法と、絶対にやってはいけない危険な改造、そして一番気になる具体的な費用について、私の経験も交えながら分かりやすく解説していきます。
ロードバイクのディスクブレーキ化と後付けのリスク

「今のフレームにディスクブレーキキャリパーをポン付けできないの?」という疑問は、ディスク化を考えた人が最初に抱く素朴な疑問でしょう。結論から申し上げますと、既存のリムブレーキ用フレームにそのままディスクブレーキを取り付けることは、構造上および安全上の理由からほぼ不可能です。「ほぼ」と言ったのは、世の中には無理やり取り付けるためのパーツが存在するからですが、それらを使用することは強く推奨されません。ここでは、なぜ安易な後付けが危険なのか、その工学的な背景を深掘りします。
- ディスクブレーキ化キットやアダプターの危険性
- リムブレーキからディスクブレーキへの変換方法
- ディスクブレーキ化のメリットとデメリット
- ディスクブレーキ化を無理やり行うリスク
- フロントのみディスクブレーキ化する際の注意点
ディスクブレーキ化キットやアダプターの危険性

AmazonやAliExpress、あるいはヤフオクなどのネットオークションを眺めていると、「ディスクブレーキ化キット」や「後付け変換アダプター」といった魅力的な名称の商品が、わずか数千円程度で販売されているのを目にします。
これらは、本来ディスクブレーキ台座(フラットマウントやポストマウント)が存在しないリムブレーキフレームのエンド部分(後輪の車軸固定部)に、金属製のプレートや金具を挟み込んで、無理やりキャリパーを取り付けようとする製品です。「これを使えば、愛着のある今のフレームを買い替えずに、憧れのディスクロードに改造できる!」と、つい購入ボタンを押したくなる気持ちは痛いほど分かります。
しかし、ペダルノートとして、そして一人のサイクリストとして断言します。これらの後付けアダプターは、いかなる理由があっても絶対に使用してはいけません。
「たかが金具ひとつで大袈裟な」と思われるかもしれませんが、これには単なる精度の問題にとどまらない、明確かつ致命的な構造工学的理由が存在します。
フレームの「応力設計」が根本的に異なる
自転車のフレームは、どこにどれだけの力がかかるかを緻密に計算して厚みや形状が設計されています。リムブレーキとディスクブレーキでは、ブレーキをかけた瞬間にフレームにかかる「応力(ストレス)」の場所と大きさが全く異なります。
- リムブレーキの場合
ホイールの最も外側(リム)を挟んで制動します。この時、ブレーキキャリパーを支えるのは、左右のシートステーをつなぐ「ブリッジ」や、フォークの股にあたる「クラウン」です。これらはフレームの中でも特に太く、ガッチリと剛性を高めて作られている部分です。 - ディスクブレーキの場合
ホイールの中心(ハブ)にある小さなローターを挟んで制動します。物理の法則で言えば「支点(ハブ軸)」に近い場所で回転を止めようとするため、テコの原理により、キャリパーを固定している土台にはリムブレーキとは比較にならないほど強烈な「ねじれトルク」が発生します。
問題は、この強大なトルクを受け止める場所です。ディスクブレーキ車は、チェーンステーやフロントフォークの先端を分厚く強化して設計していますが、リムブレーキ車のその部分は、あくまで「ホイールを支えるだけ」の強度しか持たされていない、細くて薄いパイプなのです。
最悪のシナリオ:走行中の「キャリパー巻き込み」事故
強度が不足しているリムブレーキフレームのエンド部分に、アダプターを介してディスクキャリパーを取り付けると、実際にどのような事故が起こり得るのでしょうか。
アダプター使用時の事故メカニズム
急な下り坂やパニックブレーキ時、キャリパーにはローターの回転方向に引っ張られる凄まじい力が加わります。この力に耐えきれず、アルミ製のアダプターが変形したり、フレームのエンド部分が座屈(折れ曲がり)したりすることがあります。
最も恐ろしいのは、「支えを失ったキャリパーが、回転しているホイールのスポーク内部に巻き込まれる」という現象です。これが起きると、後輪は一瞬でロックし、ライダーは成す術もなく前方へ吹き飛ばされます。時速30km以上でこれが起きれば、命に関わる重大事故は避けられません。
精度不足による機能不全と「自己責任」の罠
安全性の問題に加え、実用面でもまともに機能しないケースがほとんどです。ディスクブレーキは、パッドとローターの隙間が左右それぞれ0.2mm〜0.5mm程度という、極めてシビアな精度で動作しています。
汎用のアダプターは「どんなフレームにも付く」ように作られているため、特定のフレームに対して完璧な平行度や位置出しを行うことは不可能です。結果として、常にローターがパッドに擦れて異音が鳴り止まない、あるいはパッドが斜めに当たってブレーキが効かないといったトラブルが頻発します。
さらに忘れてはならないのが、「PL法(製造物責任法)や自転車保険の適用外になるリスク」です。メーカーが想定していない改造を行い、正体不明のアダプターを使用して事故を起こした場合、自転車保険が「整備不良」や「不正改造」とみなされ、補償が下りない可能性があります。
安価なアダプターに飛びつくことは、「安物買いの銭失い」どころか、「命失い」になりかねない行為です。安全で楽しいサイクルライフを守るためにも、この選択肢だけは絶対に除外してくださいね。
リムブレーキからディスクブレーキへの変換方法

「アダプターが危険だということは分かった。でも、どうしてもディスクブレーキにしたい場合はどうすればいいの?」
そんな切実な思いに対する答えは、小手先の改造ではなく、自転車の骨格そのものを見直すことにあります。安全かつ現実的にディスクブレーキ化を実現するためのアプローチは、大きく分けて以下の2つのルートに絞られます。
1. フレーム載せ替え(最も推奨される王道ルート)
これは、現在所有しているロードバイクから、変速機(ディレイラー)、クランク、スプロケット、ハンドル、サドルといった「資産価値のある主要パーツ」を取り外し、別途購入した「ディスクブレーキ対応のフレームセット」に移植するという方法です。
「フレームを買い替えるなんて、もはや別の自転車を買うのと同じでは?」と感じるかもしれません。しかし、これは単なる改造ではなく、あなたの愛車を現代の最新スペックへと進化させる「リボーン(再生)」の儀式と言えます。この方法が推奨されるのには、明確なメリットがあるからです。
フレーム載せ替えのメリット
- 安全性が100%保証される
メーカーがディスクブレーキ専用に設計したフレームを使うため、強度の不安が一切ありません。 - 最新規格の恩恵を受けられる
ホイールをガッチリ固定する「スルーアクスル」による剛性アップや、30c以上の「ワイドタイヤ」への対応など、ディスクロードならではの走行性能を手に入れられます。 - コストパフォーマンスが良い場合も
もし現在のバイクに「SHIMANO 105」や「Ultegra」といった上位グレードのコンポーネントがついているなら、新車を丸ごと買い直すよりも、フレーム代と不足パーツ代だけで済むため、総額を抑えつつハイエンドなバイクを組める可能性があります。
愛車の魂とも言える使い慣れたパーツを引き継ぎつつ、土台を最新にする。これが最も安全で、かつ満足度の高いディスクブレーキ化の正攻法です。
2. フロントフォークのみ交換(通称:マレット化)
もう一つは、少しマニアックな変化球的アプローチです。フレーム本体(後ろ側)はリムブレーキのまま残し、フロントフォーク(前側)だけを「ディスクブレーキ対応のカーボンフォーク」等に交換する方法です。
前輪はディスクブレーキ、後輪はリムブレーキというハイブリッドな構成になることから、前髪は短く後ろ髪が長い独特のヘアスタイルになぞらえて「マレット(Mullet)仕様」と呼ばれています。
自転車の制動力の約7割はフロントブレーキが担っていると言われます。そのため、フロントさえディスク化してしまえば、雨天時の制動力低下という最大のリスクは大幅に改善できます。「どうしても今のクロモリフレームを使い続けたいけれど、雨の通勤が怖い」といった特定のニーズを持つライダーには有効な手段となり得ます。
マレット化のリアルな課題
一見すると合理的ですが、運用面では少し面倒な点も発生します。
- ホイールがバラバラ
前後で別々のホイールを用意する必要があり、見た目の統一感を出すのが難しい。 - スペアパーツの管理
パンク修理用のチューブやブレーキシュー/パッドなど、予備パーツを2種類持ち歩く必要があるかもしれません。 - パーツ選定の難易度
次のセクションで詳しく解説しますが、「ジオメトリ(車体寸法)」を崩さない適切なフォーク選びが非常に難しく、玄人向けのカスタマイズと言えます。
基本的には「1. フレーム載せ替え」を第一候補とし、特別な事情や強いこだわりがある場合のみ「2. マレット化」を検討するのが、失敗のないディスクブレーキ化への道筋です。
ディスクブレーキ化のメリットとデメリット

具体的な改造方法に入る前に、一度立ち止まって冷静に考えてみましょう。「数万円、あるいは十数万円というコストと手間をかけてまで、本当にディスクブレーキ化する必要があるのか?」
業界全体がディスクブレーキ推しであることは間違いありませんが、だからといって全てのライダーにとってそれが最適解とは限りません。ご自身のライディングスタイルと照らし合わせながら、そのメリットとデメリットを比較検討してみてください。(出典:シマノ『ディスクブレーキシステム』)
| 比較項目 | ディスクブレーキ化のメリット | ディスクブレーキ化のデメリット・課題 |
|---|---|---|
| 制動力と 安全性 | 天候に左右されない安定感。 雨天時や濡れた路面でも、摩擦係数が大きく低下せず、軽い力で確実に止まれます。 | メンテナンス頻度の増加。 パッドとローターのクリアランスが極めて狭いため、調整が甘いと「シャリシャリ」という音鳴りが発生しやすいです。 |
| タイヤ クリアランス | 太いタイヤ(ワイドタイヤ)が履ける。 ブレーキアーチの制約がなくなるため、30cや32cといったエアボリュームのあるタイヤを装着可能。乗り心地が劇的に向上します。 | 細いタイヤ派には恩恵が薄い。 「ロードは23cか25cで軽快に走りたい」という方には、フレームが重くなる分、メリットを感じにくいかもしれません。 |
| ホイールと 経済性 | リムが削れず、寿命が長い。 ブレーキでリムを摩耗しないため、高価なカーボンホイールでも熱変形(デラミネーション)を恐れず、長く使い続けられます。 | 重量増と導入コスト。 ローターやキャリパーの分、車体重量はどうしても数百グラム重くなります。また、導入時のイニシャルコストは高額です。 |
| 操作性 (タッチ) | 指一本でコントロール可能。 特に油圧式や高性能な機械式(EQUAL等)は引きが軽く、長いダウンヒルでも握力がなくなりません。 | 輪行時の気遣い。 ホイールを外した際、ローターが曲がらないように保護したり、ブレーキパッドが閉じないようスペーサーを挟む手間が必要です。 |
個人的に感じる最大の恩恵:ワイドタイヤによる「革命」
スペック上の制動力も魅力的ですが、私が実際にディスクロードに乗り換えて最も感動したのは、表にもある通り「30cや32cといった太いタイヤが履けること」です。
リムブレーキ時代は、キャリパーの物理的な限界で25c(頑張っても28c)が限界でした。しかし、ディスクブレーキ化によってその制約から解放されると、ロードバイクの世界観が変わります。空気圧を下げて乗ることができるため、路面からの微振動が驚くほどカットされ、まるで高級セダンに乗っているかのような滑らかな走り心地になります。
「速さ」より「楽さ」を求める人へ
これは単に乗り心地が良いだけでなく、「ロングライドでの疲労感が全く違う」という結果に直結します。ディスクブレーキ化は、「レースで1秒を削り出すため」だけでなく、「週末のライドをより楽に、安全に、どこまでも走り続けるため」のカスタムだと考えると、その価値がより鮮明に見えてくるはずです。
32Cタイヤの具体的な選び方や空気圧設定、通勤・ロングライドでの活用法については、ロードバイクは32Cタイヤで快適走行!空気圧・選び方を徹底解説でも詳しく紹介しています。
カーボンホイールの寿命問題からの解放
もう一つの大きなメリットは、ホイール(特にリム)が消耗品ではなくなることです。リムブレーキでカーボンホイールを使う場合、長い下り坂でのブレーキ熱によってリムが変形・破損するリスクと常に隣り合わせでした。雨の日にはブレーキが効かなくなる上に、リムが砂噛みで削れていく音に心を痛めた経験がある方も多いでしょう。
ディスクブレーキなら、制動は安価な交換部品である「ローター」が引き受けてくれます。数十万円する高価なカーボンホイールを、摩耗や熱ダメージを気にせずガンガン使い倒せる。この精神的な解放感と長期的な経済性は、ディスクブレーキ化の隠れた、しかし非常に大きなメリットと言えるでしょう。
ディスクブレーキ化を無理やり行うリスク

前項で「後付けアダプター」の危険性について触れましたが、中にはさらに強引な手法で解決しようと考える方も稀にいらっしゃいます。「フレーム自体を加工すればいいのでは?」という発想です。
具体的には、「リムブレーキフレーム(エンド幅130mm)のリア三角をジャッキや工具で無理やり左右に押し広げて、幅の広いディスク用ホイール(エンド幅135mmや142mm)をねじ込む」という荒技です。結論から言えば、これは自転車を破壊する行為に等しく、絶対に推奨できません。
エンド幅(OLD)と固定規格の決定的不一致
自転車のフレームには、リアエンド幅(OLD: Over Locknut Dimension)という厳格な規格が存在します。ブレーキシステムの変遷と共に、この幅も変わってきました。
| ブレーキ / 車種 | エンド幅 (OLD) | 固定方式 | 互換性 |
|---|---|---|---|
| リムブレーキロード | 130mm | クイックリリース (QR) | 基準 |
| 初期ディスクロード / CX | 135mm | クイックリリース (QR) | × 不可 (+5mm) |
| 現代ディスクロード | 142mm | スルーアクスル (TA) | × 不可 (+12mm) |
ディスクブレーキ用のホイールを装着しようとすると、フレームを左右合わせて5mm〜12mmも広げる必要があります。さらに、現代の標準である「142mmスルーアクスル」は、そもそもハブ軸の太さ(12mm)や固定構造(フレームにネジ山がある)が根本的に異なるため、単に幅を広げただけでは物理的にホイールを固定することすらできません。
素材別のリスク:なぜ「広げる」のが危険なのか
「鉄フレーム(クロモリ)ならしなるから大丈夫では?」という意見を耳にすることがありますが、これも大きな誤解です。素材ごとのリスクを見てみましょう。
- アルミ / カーボンフレームの場合(論外)
これらの素材は「延性(伸びる性質)」が非常に低く設計されています。ジャッキ等で無理に広げようとした瞬間、「バキッ」という音と共に接着面が剥離したり、パイプにクラック(亀裂)が入ったりします。見た目に変化がなくても内部で層間剥離が起きている可能性が高く、走行中に突然破断する時限爆弾となります。 - クロモリフレームの場合(危険)
鉄はしなるため、物理的に135mm幅まで広げてホイールを押し込むことは可能かもしれません。しかし、それは「バネを常に引っ張っている状態」と同じです。チェーンステーとシートステーには、常に元に戻ろうとする強い応力がかかり続けます。この状態で路面からの振動を受けると、金属疲労が急速に蓄積し、通常よりも遥かに早い段階で溶接箇所やパイプが破断します。
アライメント(精度)の狂いも致命的
無理やり広げると、リアエンドが「ハの字」に開いてしまい、左右の平行が出なくなります。これにより以下のようなトラブルが連鎖します。
- ディレイラーハンガーが斜めになり、変速がまともに決まらなくなる。
- ハブのベアリングに偏った負荷がかかり、ホイールの回転が悪くなる。
- ローターとパッドの平行が出せず、ブレーキの片効きや音鳴りが解消できない。
「入ったからOK」ではありません。設計寸法を超えた運用は、フレームの寿命を著しく縮めるだけでなく、高速走行中に機材が破損してライダーを危険に晒す行為です。規格の壁は、力技ではなく正しいパーツ選びで乗り越えるべきものです。
フロントのみディスクブレーキ化する際の注意点

「予算などの都合で、とりあえずフロントフォークだけ交換してマレット化したい」
「前輪さえディスクになれば、雨の日も安心だから」
そのお考え、非常によく分かります。フレームごと載せ替えるよりも手軽で、コストパフォーマンスが高そうに見えますよね。しかし、この「フロントフォーク単体交換」には、パーツ選びにおいて少しでも間違えると乗り味を完全に破壊してしまう、非常にシビアな「ジオメトリ(車体設計寸法)の罠」が待ち受けています。
ハンドリングを支配する「A2C」という数値
自転車のハンドリング特性は、ヘッドアングルやオフセット量など、ミリ単位の緻密な計算の上に成り立っています。その中でも、フォーク交換において最も重要かつ見落としがちなのが「A2C(Axle to Crown)」という数値です。
A2C(肩下寸法)とは?
フロントハブの軸(Axle)中心から、フォークの肩(Crown/ヘッドパーツの下玉押しが当たる部分)までの直線の長さのことです。いわば「フォークの脚の長さ」です。
市場に潜む「25mm」の落とし穴
ここに、リムブレーキ車をディスク化しようとするライダーを悩ませる「規格の断絶」が存在します。
- 一般的なロードバイク(リムブレーキ)のA2C
およそ 367mm 〜 370mm 程度で設計されています。 - 市販されているディスクブレーキ用フォークのA2C
現在流通している製品の多くは、40c以上の太いタイヤを履くことを想定した「グラベルロード」や「シクロクロス」用であり、その長さは 395mm 〜 400mm が標準です。
つまり、何も知らずに「ディスク用フォーク」を買ってしまうと、元のフォークより約25mm〜30mmも長い(背が高い)ものを取り付けることになってしまうのです。
ジオメトリ崩壊による「チョッパー化」の弊害
たかが2.5cmと思うかもしれませんが、自転車のジオメトリにおいてこの差は致命的です。370mm設計のフレームに395mmの長いフォークを取り付けると、車体全体が前上がりになり、アメリカンバイクのような「チョッパー状態」になります。これにより、以下のような深刻なデメリットが発生します。
フォークが長すぎることによる3つの悪影響
- ハンドリングの悪化(ふらつき)
車体が持ち上がることで「ヘッドアングル」が寝て(スラックになり)、「トレール量」が過大になります。直進安定性は増すものの、低速域でハンドルを切ると、勝手にタイヤが切れ込んでいく「ホイールフロップ」現象が起き、非常にふらつきやすく扱いにくいバイクになります。 - 重心位置の上昇と足つきの悪化
BB(ボトムブラケット)の位置が高くなるため、コーナリング時の安定感が損なわれるほか、停車時の足つきが悪くなります。 - ポジションが出せなくなる
車体が後ろに傾くことで「シートアングル」も寝てしまいます。サドルが相対的に後ろに下がってしまうため、サドルを一番前に出しても適正なペダリング位置(膝の位置)が出せなくなる可能性があります。
成功の鍵は「ロード専用設計フォーク」の入手だが…
ロードバイク本来のキビキビとした軽快なハンドリングを維持したままマレット化するためには、グラベル用ではなく、純粋なロード用として設計された「A2C 370mm前後のディスクフォーク」をピンポイントで探し出す必要があります。
日本ブランドの「OnebyESU(ワンバイエス) OBS-RBD」などが数少ない解決策として知られていますが、こうした特殊なフォークは大量生産されていないため非常に高価です。
- ロード用カーボンディスクフォーク単体: 約50,000円〜70,000円
- フロントホイール+ブレーキ+ローター: 約30,000円〜
合計するとフロント周りだけで8万円〜10万円近い出費になります。「コストを抑えるためにフォークだけ交換」という当初の目的から外れ、「それならあと数万円出して、フレームセットごと載せ替えたほうが幸せになれるのでは?」という結論に至ることが多いのが、マレット化の難しいところなのです。
もしマレット化を行うなら、この「A2C問題」と「コスト対効果」を十分に理解した上で、慎重にパーツ選定を行ってくださいね。
ロードバイクをディスクブレーキ化する費用と方法

ここまでリスクや注意点を中心にお話ししてきましたが、ここからは前向きに、「どうすればコストを抑えつつ、安全にディスクブレーキ化(フレーム載せ替え)を実現できるか」について、具体的な費用感とパーツ選びのテクニックを解説します。「油圧ディスクは高嶺の花」と諦めるのはまだ早いですよ。
- フレーム交換によるディスクブレーキ化の費用
- コンポ載せ替えで費用を抑えるポイント
- 機械式ディスクブレーキのおすすめパーツ
- エンド幅の違いとホイール交換の必要性
- ショップでの工賃とディスクブレーキ化の総額
- 総括:ロードバイクのディスクブレーキ化の判断
フレーム交換によるディスクブレーキ化の費用

「フレーム載せ替え」を選択した場合、プロジェクトの総額を決定づける最大の変数は、間違いなく「フレームセット」の購入価格です。ここをどう抑えるかで、安価なアップグレードになるか、あるいは新車を買う以上の散財になるかが決まります。
新品フレームは価格高騰中!「新車の方が安い」逆転現象も
昨今の自転車価格の高騰は凄まじく、新品のフレームセット(フレーム+フォーク)単体で購入しようとすると、想像以上の予算が必要になります。
- アルミフレーム: 15万円 〜 20万円
- ミドルグレードカーボン: 30万円 〜 50万円
- ハイエンドカーボン: 60万円 〜 100万円以上
正直なところ、新品のフレームを買って載せ替えるくらいなら、完成車のセール品を狙ったほうが安上がりなケースが大半です。「新品フレームへの載せ替え」は、特定のカラーやモデルに強烈なこだわりがある人向けの贅沢な選択肢と言えるでしょう。
狙い目は「中古市場」の良品フレーム
そこで現実的な選択肢として浮上するのが、メルカリやヤフオク、中古自転車専門店などの「中古市場」です。ディスクブレーキへの移行期から数年が経過し、市場には「初期〜中期のディスク用フレーム」が比較的安価で流通し始めています。
予算5万円〜10万円もあれば、状態の良い有名ブランドのアルミフレームや、数年前のハイエンドカーボンフレーム(型落ち)が見つかる可能性が十分にあります。これなら、トータルコストを抑えつつ、憧れのメーカーに乗る夢も叶えられます。
【最重要】中古フレーム選びで絶対に外してはいけない「規格」のチェック
ただし、中古フレームには大きな落とし穴があります。それは「過渡期の規格」です。ディスクロードの規格が統一される前のモデル(2015年〜2017年頃)を買ってしまうと、後々のパーツ選びで地獄を見ることになります。
以下の2点は、購入前に必ず出品画像や説明文で確認してください。ここさえ守れば、大きな失敗は防げます。
避けるべき「古い規格」と選ぶべき「現代の標準」
| チェック項目 | 選ぶべき「現代の標準」 | 避けるべき「古い/マイナー規格」 |
|---|---|---|
| ブレーキ台座 | フラットマウント (今のキャリパーはほぼこれ専用) | ポストマウント (MTB由来。今のロード用キャリパーが付かない) |
| アクスル固定 | 12mm スルーアクスル (前後とも12mmが絶対の正解) | クイックリリース (QR) 15mm スルーアクスル (ホイールの選択肢が激減します) |
特に「15mmスルーアクスル」や「クイックリリース式のディスクフレーム」は、適合するホイールを探すのが極めて困難です。安さにつられて飛びつかず、必ず「フラットマウント & 前後12mmスルー」のフレームを選んでください。
また、フレームセットには「BB(ボトムブラケット)」や「ヘッドセット」が付属していない場合もあります。これらはフレームごとに規格がバラバラで、別途購入すると数千円〜1万円ほどかかるため、付属品の有無もコスト計算に入れておくのが賢い買い方です。
コンポ載せ替えで費用を抑えるポイント

フレームの目処が立ったら、次はいよいよパーツの移植です。ここで多くのサイクリストが直面し、頭を抱えることになる最大の予算の壁。それが「STIレバー(ブレーキ/シフトレバー)の買い替え問題」です。
なぜ「レバー」が最大のネックになるのか?
現在、完成車として販売されているディスクロードの9割以上は「油圧式(ハイドロリック)」を採用しています。油圧式は軽いタッチと絶対的な制動力が魅力ですが、システム全体を刷新しようとすると、以下の理由からコストが跳ね上がります。
- 構造の非互換性
今お使いのリムブレーキ用STIレバーは「金属ワイヤー」を引く構造です。一方、油圧ブレーキキャリパーは「オイル」を押し出す構造です。この両者に互換性はなく、油圧にするならレバーを丸ごと買い換える必要があります。 - 高額な部品代
油圧対応のSTIレバーは非常に高価です。例えば「SHIMANO 105(R7000系/R7100系)」グレードであっても、左右セットで約40,000円〜50,000円。Ultegraになればそれ以上です。 - 追加パーツと工具
さらに、専用のオイルホース、ミネラルオイル、接続金具(オリーブ・インサート)、そしてエア抜き用のブリーディングキットなどが必要になり、これだけでプラス1万円近くかかります。
つまり、油圧式にこだわると、ブレーキ周りだけで6〜7万円の出費が確定してしまうのです。
救世主「機械式ディスクブレーキ」という選択肢
ここで費用を劇的に抑えるための裏技が、「機械式ディスクブレーキ(メカニカルディスクブレーキ)」の採用です。
これは、キャリパー本体までは従来通り「ブレーキワイヤー」で引っ張り、キャリパー内部のカム機構でピストンを動かしてローターを挟む仕組みのブレーキです。構造がリムブレーキと同じ「ワイヤー引き」であるため、現在愛用しているリムブレーキ用のSTIレバーをそのまま流用することが可能になります。
機械式を選ぶことによるコスト圧縮効果
| 項目 | 油圧式へ移行する場合 | 機械式で組む場合 |
|---|---|---|
| STIレバー | 買い替え必須 (約45,000円) | 流用可能 (0円) |
| キャリパー | 油圧用 (約15,000円) | 機械用 (約15,000円〜30,000円) |
| その他消耗品 | ホース・オイル等 (約8,000円) | ブレーキワイヤー (約2,000円) |
| ブレーキ関連合計 | 約 68,000円 〜 | 約 17,000円 〜 |
このように、レバーを流用できるだけで約4〜5万円もの節約になります。浮いた予算を、軽量なホイールや、よりグレードの高いタイヤに回すほうが、結果として走りの満足度は高くなることが多いです。
その他のコンポーネントは流用できる?
朗報です。ブレーキシステム以外の主要パーツ、すなわち「フロントディレイラー」「リアディレイラー」「クランクセット」「スプロケット」「チェーン」は、変速段数(11速など)が同じであれば、リムブレーキ車からディスクブレーキ車へそのまま移植可能です。
つまり、機械式ディスクブレーキを選択するということは、「フレームとホイール、そしてブレーキキャリパー以外は、今の愛車を丸ごと引っ越しできる」ということを意味します。これこそが、最も経済的合理性の高いディスクブレーキ化のアプローチなのです。
機械式ディスクブレーキのおすすめパーツ

「機械式のディスクブレーキ? それって効きが悪くて、レバーが重いアレでしょ?」
もしあなたがそう思っているなら、その常識は今日でアップデートする必要があります。確かに一昔前の機械式ディスクブレーキは、ワイヤーの摩擦抵抗が大きく、握力を鍛えるトレーニングマシンのようにレバーが重かったり、長い下り坂で制動力不足を感じたりする製品も少なくありませんでした。
しかし、現在は設計技術の革新により、「油圧式と遜色ない」と評されるほど高性能な機械式キャリパーが登場しています。ここでは、コンポ載せ替え派のサイクリストから絶大な支持を集める、信頼の3モデルを厳選してご紹介します。
1. GROWTAC EQUAL(グロータック イコール)
〜日本が誇る「機械式最高峰」の傑作〜
現在、載せ替え市場において「これを選べば間違いない」と言われる圧倒的な一番人気が、日本のパーツメーカーGROWTACが開発した「EQUAL」です。
ここが凄い!
- 油圧並みの制動力
高剛性なキャリパーボディと独自のカム機構により、ワイヤー式とは思えないガツンと効く制動力を実現しています。 - 専用ケーブルが付属
ブレーキの引きの軽さは「ケーブル」で決まります。EQUALには、摩擦ロスを極限まで減らした専用の「ハードアウター」と「スリックインナー」が標準付属しており、トータルで性能を保証しています。 - 超軽量
キャリパー単体重量は世界最軽量クラス(136g)。油圧システムよりもバイク全体を軽く仕上げることが可能です。
私も実際に愛車に組み付けて使用していますが、初めて握ったときは「えっ、これ本当にワイヤーで引いてるの?」と驚愕しました。目隠しされて乗ったら、油圧式と区別がつかないレベルです。カラーバリエーションも豊富(レッド、ブルー、ゴールドなど)で、愛車のアクセントになるのも嬉しいポイントですね。
2. TRP Spyre(ティーアールピー スパイア)
〜メンテナンス性に優れた「対向ピストン」の名機〜
機械式ディスクブレーキの多くは、片方のパッドだけが動いてローターを押し付ける「片押し式」ですが、このTRP Spyreは、油圧式と同じく左右のパッドが両方とも動いてローターを挟み込む「対向ピストン(両押し)式」を採用しています。
ローターを無理に歪ませて止める必要がないため、パッドが均一に減りやすく、ローターへの攻撃性も低いのが特徴です。パッドのクリアランス調整も左右独立して行えるため、メカニックやDIY派のユーザーから長く愛されている名機です。制動力はEQUALほどガツンとはきませんが、コントロール性が高く扱いやすいブレーキです。
3. SHIMANO BR-RS305
〜コストパフォーマンス重視の純正クオリティ〜
SHIMANOが展開するロード用機械式ディスクキャリパーです。最大の魅力はその価格と入手性の良さ。前後揃えても1万円台半ばで収まるため、とにかく予算を抑えたい場合の有力候補です。
シマノ純正という安心感はありますが、構造はシンプルな「片押し式」であり、上位モデルに比べると重量も少し重めです。また、制動力はかなりマイルド(効きが穏やか)なので、レース志向の方よりは、のんびりツーリングを楽しむ方に向いています。
おすすめ3モデルのスペック比較
| モデル名 | 実勢価格(前後セット) | 作動方式 | 制動力 | 引きの軽さ | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|---|
| GROWTAC EQUAL | 約33,000円 | 片押し(独自構造) | ◎(最強) | ◎(極軽) | S(予算が許せばコレ一択) |
| TRP Spyre | 約20,000円〜 | 両押し(対向) | ◯ | ◯ | A(メンテ重視派に) |
| SHIMANO BR-RS305 | 約16,000円 | 片押し | △(マイルド) | △ | B(コスパ重視派に) |
【重要】機械式ブレーキは「ケーブル」が命!
機械式ディスクブレーキの性能を100%引き出すための秘訣は、キャリパーそのものよりも「ケーブル(ワイヤー)の品質」と「取り回し(ルーティング)」にあります。
安価な鉄製ワイヤーや、柔らかすぎるアウターケーシングを使うと、ブレーキを握った力が逃げてしまい、グニャグニャとした不快なタッチになってしまいます。EQUAL以外のキャリパーを使う場合でも、ケーブルには「日泉ケーブル(NISSEN)」などの高品質なコンプレッションレス(圧縮されにくい)製品を使うことを強くお勧めします。これだけで、ブレーキの効きが別次元に変わりますよ。
エンド幅の違いとホイール交換の必要性

フレームを載せ替える際に、もう一つ避けて通れない大きなハードルがあります。それが「ホイールの総入れ替え」です。
「えっ、今のホイールは使えないの?」
「変換アダプターみたいなもので付かないの?」
残念ながら、答えはNOです。リムブレーキ車とディスクブレーキ車では、ホイールをフレームに固定するハブの規格が根本的に異なるため、物理的に装着することができません。
決定的な「規格の断絶」:130mm QR vs 142mm TA
なぜ流用が不可能なのか、その理由は「幅(エンド幅)」と「軸の太さ・固定方法」の2点にあります。
- リムブレーキ用ホイール
エンド幅は130mm。固定は細い棒(5mm)を通す「クイックリリース(QR)」方式。 - ディスクブレーキ用ホイール
現在の標準エンド幅は142mm。固定は太いパイプ(12mm)を通す「スルーアクスル(TA)」方式。
「変換アダプター」は存在しないの?
よくある勘違いですが、130mmクイックのハブを142mmスルーアクスルに変換するアダプターは、構造上存在しません(※逆のパターンや、一部の高級ハブでシャフト交換できるケースを除く)。
そもそもハブの幅が12mmも足りない上に、軸を通す穴の直径も違うため、どうあがいても物理的にフレームに固定することができないのです。そのため、ディスクブレーキ化=ホイールの買い直しはセットで考える必要があります。
予算別・ディスクブレーキ用ホイールの選び方
「フレームも買って、ホイールも買うなんて予算オーバーだ!」という悲鳴が聞こえてきそうですが、安心してください。ホイールは価格帯が幅広く、最初は安いものを選んでおいて、後からアップグレードするという楽しみ方ができます。
予算に応じた3つの選択肢をまとめました。
| グレード | 予算目安(前後) | 代表的なモデル | 特徴・おすすめユーザー |
|---|---|---|---|
| エントリー (通称:鉄下駄) | 約2.0万 〜 3.0万円 | SHIMANO WH-RS171 ALEXRIMS など | 【まずはここから】 重量は2kg近くあり重いが、頑丈で耐久性は抜群。予算を圧縮してとにかく組み上げたい人に最適。通勤や練習用としても優秀。 |
| ミドルグレード (アルミ) | 約5.0万 〜 9.0万円 | MAVIC Ksyrium S Fulcrum Racing 3 DB DT SWISS P1800 | 【脱・初心者】 重量が軽くなり、漕ぎ出しの軽快さが体感できるレベル。チューブレス対応モデルも多く、ロングライドを快適に楽しみたい人向け。 |
| ハイエンド (カーボン) | 15万円 〜 無限 | SHIMANO Ultegra/Dura-Ace MAVIC Cosmic LUN HYPER など | 【ディスク化の真骨頂】 リムブレーキと違い、ブレーキ熱でリムが痛む心配がないため、カーボンホイールを普段使いできるのが最大のメリット。見た目の迫力も性能も最高。 |
ディスクブレーキ対応ホイールの具体的なモデル比較や、価格帯別の選び方については、ロードバイク用ホイールのコスパ最強おすすめ&失敗しない選び方もあわせてチェックしてみてください。
賢い投資のアドバイス:最初は「鉄下駄」でもOK!
私のアドバイスとしては、もし予算が厳しいなら、最初は無理をせず「SHIMANO WH-RS171」などの安価なエントリーホイール(鉄下駄)で組むことを強くお勧めします。
なぜなら、ディスクブレーキロードは「フレーム」と「コンポ(特に油圧の場合)」にお金がかかるからです。ホイールは最も交換が簡単なパーツです。まずはバイクを完成させて走り出し、ディスクブレーキの恩恵を十分に感じてから、「ボーナスが出たらカーボンホイールを買おう!」と次の目標にするのが、長く楽しむコツですよ。
ローターの固定方式に注意!
ホイールを選ぶ際は、ディスクローターの取り付け規格にも注意が必要です。
- センターロック式(主流)
シマノなどが採用。専用のロックリングで固定。着脱が簡単。 - 6ボルト式
6本のボルトで固定。MTB系に多いが、ロード用ホイールでも稀にある。
基本的には、ローターの入手性が良い「センターロック式」のホイールを選んでおけば間違いありません。
ショップでの工賃とディスクブレーキ化の総額

ここまで、必要なパーツやその選び方について詳しく見てきました。では、いよいよ核心部分である「お金」の話をしましょう。
フレームを中古などで安く入手し、手持ちのコンポを移植する「フレーム載せ替え(機械式ディスクブレーキ仕様)」をプロショップに依頼した場合、最終的にいくら支払うことになるのか? リアルな見積もりをシミュレーションしてみます。
【試算】載せ替えにかかる費用の内訳(フレーム代別)
前提として、コンポーネント(105 R7000系など)は既存のバイクから取り外して流用し、ブレーキキャリパーには高性能な機械式「GROWTAC EQUAL」を使用する、最もコストパフォーマンスと性能のバランスが良いパターンで計算します。
| 項目 | 費用目安(税込) | 備考・内訳 |
|---|---|---|
| 機械式キャリパー | 約 33,000円 | GROWTAC EQUAL(前後セット・ケーブル付属) |
| ディスクローター | 約 8,000円 | SHIMANO SM-RT70(105グレード)×2枚 |
| ホイール(前後) | 約 25,000円 | SHIMANO WH-RS171(エントリーモデル) |
| 消耗品・小物類 | 約 15,000円 | BB変換、チェーン、バーテープ、シフトワイヤー等 |
| 載せ替え工賃 | 約 35,000円 〜 | バラし、組み付け、調整一式(※店舗により変動) |
| 合計金額 | 約 116,000円 〜 | ※フレームセット代金は含まず |
いかがでしょうか。「意外とかかるな…」と思われた方も多いのではないでしょうか。パーツ代と工賃だけで、約11万円〜12万円の現金が出ていく計算になります。
見落としがちな「スモールパーツ」と「工賃」の罠
この見積もりには、初心者が計算から漏らしがちな2つの落とし穴が含まれています。
- 地味に高い「スモールパーツ」代
フレームが変わると、規格の違う「ボトムブラケット(BB)」や、長さが変わる「チェーン」、新調必須の「バーテープ」や「シフトワイヤー」など、細かい部品の購入が必要になります。これらが積み重なると、あっという間に1万円、2万円とかさんできます。 - 工賃の変動要因
上記の工賃(3.5万円)はあくまで標準的な目安です。最近流行りの「ケーブルフル内装フレーム(ハンドルの中にワイヤーを通すタイプ)」の場合、作業難易度が跳ね上がるため、工賃が1.5倍〜2倍になることも珍しくありません。また、他店購入のフレームやパーツを持ち込む場合、「持ち込み工賃」として割増料金(通常工賃の2倍など)が適用されるショップも多いため、事前の確認が必須です。
最終判断:載せ替えか? 新車購入か?
もし、中古フレームを8万円で購入したと仮定すると、総額は約20万円になります。
一方で、市場を見渡すと、SHIMANO Tiagra(油圧ディスク)を搭載したアルミロードの新車が20万円前後、105(機械式12速)搭載モデルでも25万円〜30万円程度で購入可能です。この事実を踏まえると、経済的な合理性の境界線(損益分岐点)は以下のように定義できます。
ディスクブレーキ化の判断基準
- 【載せ替えがアリな人】
「今のコンポが105(R7000)やUltegra以上で、まだ十分に使える」
「どうしても乗りたい憧れのフレーム(絶版色やハイエンド)を中古で安く入手できた」
「自分だけのこだわりパーツで組みたい」 - 【新車購入が正解な人】
「今のコンポがClaris、Sora、Tiagraなどのエントリーグレードだ」
「フレームにそこまで強いこだわりはない」
「とにかく安く、安全にディスクロードに乗り出したい」
20万円前後の完成車を候補にする場合は、コンポーネントグレードやディスク/リムブレーキの選び方を整理した20万円前後のロードバイクで選べるコンポとアップグレード戦略も参考になるはずです。
「単に安く済ませたい」という動機だけで載せ替えを選ぶと、手間とリスクに見合わない結果になることが多いです。しかし、愛着のあるパーツを活かして、自分だけの一台を組み上げるプロセスは、お金には代えられない「趣味としての楽しさ」があるのも事実。
コストとロマン、どちらを優先するか。じっくり悩んで決めるのも、ロードバイクの醍醐味の一つですね。
総括:ロードバイクのディスクブレーキ化の判断

今回は、ロードバイクのディスクブレーキ化について、アダプターの危険性という技術的な裏側から、載せ替えにかかるリアルなお金の話まで、かなり踏み込んで解説してきました。ここまで長い文章にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
ディスクブレーキ化は、単なるパーツ交換ではありません。自転車のフレーム設計、ホイールの固定方式、そしてブレーキの動作原理まで、システム全体を根底から入れ替える大規模なプロジェクトです。だからこそ、ネット上の断片的な情報だけで判断せず、ご自身の状況に合わせた冷静な選択が必要です。
最後に、ペダルノートとしての「最終結論」を3つのポイントにまとめさせていただきます。
1. 【絶対禁止】アダプターでの無理やりな後付け
これは何度言っても言い足りないくらい重要なことです。数千円で買えるアダプターや、フレームを無理やり広げる加工は、安全性ゼロのギャンブルです。あなたの大切な身体と、愛着のあるフレームを守るために、この選択肢だけは絶対に捨ててください。「できないものはできない」と割り切る勇気も、安全なサイクルライフには必要です。
2. 【推奨】コンポ資産があるなら「フレーム載せ替え」
もしあなたが、SHIMANO 105(R7000系)やUltegra(R8000系)といった「まだまだ現役で使える上位コンポーネント」を持っていて、かつ「どうしても乗りたいフレーム(中古のハイエンドや絶版モデルなど)」があるなら、載せ替えは最高の選択肢になります。
その際は、高額な油圧STIレバーへの買い替えを回避できる「機械式ディスクブレーキ(特にGROWTAC EQUAL)」を賢く活用してください。これにより、コストを抑えつつ、自分だけのこだわりが詰まった一台を組み上げる「自作のロマン」を味わうことができます。
3. 【最適解】エントリー車なら迷わず「新車へ買い替え」
現在乗っているバイクがClaris、Sora、Tiagra組みのエントリーモデルである場合、あるいはフレームに特別な思い入れがない場合は、載せ替え工賃だけで車体価格を超えてしまう「本末転倒」な事態になりかねません。
ここは潔く今のバイクを下取りに出したり、サブバイクとして残したりして、最新設計のディスクロード完成車に買い替えるのが、経済的にも性能的にも間違いなく正解です。最新のバイクは、スルーアクスルやワイドタイヤに合わせて最適化されており、その乗り味の進化にきっと驚くはずです。
ディスクブレーキ化は、雨の日の不安を消し去り、より遠くへ、より快適に走るための素晴らしいアップグレードです。しかし、そこには規格の壁や安全性のハードルが確かに存在します。
この記事が、あなたの迷いを晴らす羅針盤になれば嬉しいです。最終的な決断をする際は、ネットの情報だけを鵜呑みにせず、ぜひ信頼できるプロショップのメカニックさんに相談してみてください。ご自身の予算と情熱に見合った「ベストな一台」に巡り会えることを、心から応援しています!


