ロードバイクのベルトドライブ化!メリットや寿命とおすすめ製品

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ロードバイクのベルトドライブ化!メリットや寿命とおすすめ製品
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こんにちは。ペダルノート 運営者の「アキ」です。

毎日の通勤や週末のライドで、チェーンの油汚れや面倒な注油メンテナンスにうんざりしていませんか。あるいは、他のライダーとは一味違う、静かで個性的な一台を組み上げたいと考えているかもしれませんね。そんな悩みを解決する画期的な選択肢が、ロードバイクのベルトドライブ化です。しかし、いざ検討し始めると、寿命の長さや「重い・遅い」といった走行性能の噂、そもそも既存フレームへの改造が可能かどうかなど、疑問は尽きないはずです。この記事では、メンテナンスフリーの魅力からデメリット、自作やアルベルトでの代用といったマニアックな話題まで、私の経験とリサーチをもとに徹底解説します。

記事のポイント
  • 注油不要で寿命も長いベルトドライブの具体的なメンテナンスフリー生活
  • チェーン駆動と比較した際の重量や坂道での抵抗に関する真実
  • 既存のフレームを後付けキットでベルト化する改造方法と費用の目安
  • 日本で購入可能な完成車やドロップハンドル化に必要なパーツの選び方
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ロードバイクをベルトドライブ化するメリットと特徴

ロードバイクをベルトドライブ化するメリットと特徴
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ここでは、従来のチェーン駆動とは一線を画すベルトドライブの技術的な特性について深掘りしていきます。毎日のように自転車に乗る私たちが喉から手が出るほど欲しい「メンテナンスフリー」という夢のようなメリットだけでなく、多くのサイクリストが懸念している「走り」への影響や、導入前に必ず知っておくべき構造上の高いハードルについても、包み隠さず詳細に解説しますね。

  • 寿命とメンテナンスの手間なし生活
  • 重いし遅い?坂道での走行性能検証
  • ベルトドライブのデメリットと異音
  • 既存ロードバイクを改造できるか
  • 後付けキットVeerの仕組みと費用
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寿命とメンテナンスの手間なし生活

寿命とメンテナンスの手間なし生活
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ベルトドライブ導入を検討する最大の動機、それは間違いなく「圧倒的なメンテナンスフリー性能」でしょう。私たちロードバイク乗りにとって、チェーンの管理は永遠の課題です。週末のロングライドから帰ってきて、クタクタに疲れているのにチェーンクリーナーで黒い油汚れを落とし、一コマずつ丁寧に注油をする……。 チェーン駆動のまま使い続ける場合の具体的な洗車・注油手順については、 ロードバイクの洗車頻度と効果的なメンテナンス方法 で詳しく解説しています。 この「義務」から解放されることは、単に作業時間が減るだけでなく、自転車生活の質(QOL)を根本から変えてしまうほどのインパクトがあります。

ここでは、なぜベルトドライブがそこまで長持ちするのかという技術的な裏付けと、実際の運用における「やっていいこと・ダメなこと」を含めたリアルな維持管理について深掘りします。

チェーンの3倍以上?驚異的な寿命の秘密

まず、寿命について具体的な数字を見てみましょう。一般的な金属製チェーンは、どんなに高級なオイルを使ってメンテナンスしていても、走行距離3,000km〜5,000km程度で「伸び(ピッチの広がり)」が発生し、交換時期を迎えます。伸びたチェーンを使い続けると、スプロケットやチェーンリングの歯を削ってしまい、駆動系全体をダメにしてしまうからです。

一方で、現在スポーツ自転車用ベルトの業界標準となっているGates(ゲイツ)社の最上位モデル「CDXベルト」は、約15,000kmから、条件が良ければ30,000km近く走行しても交換不要という驚異的な耐久性を誇ります。

この耐久性を支えているのが、ポリウレタン樹脂の中に埋め込まれた「カーボン心線(Carbon Tensile Cords)」です。非常に高い引張強度を持つカーボン繊維が芯に入っているため、金属チェーンのように摩耗によって全長が伸びることが物理的にほとんどありません。結果として、「ベルトが伸びないから、歯(スプロケット)も削れにくい」という好循環が生まれ、システム全体の寿命が劇的に延びるのです。

コストパフォーマンスの真実
ベルトドライブの初期導入コストや交換パーツ代はチェーンよりも高価です。しかし、チェーン3〜5本分、カセットスプロケット2〜3個分の寿命をベルト1本でカバーできると考えると、長い目で見ればランニングコストは同等か、むしろ安上がりになる計算が成り立ちます。

注油厳禁!正しいメンテナンスの作法

「メンテナンスフリー」といっても、「完全に放置していい」わけではありません。長く快適に使うためには、ベルトドライブ特有の管理ルールを守る必要があります。特に重要なのが「注油厳禁(No Lube)」という鉄の掟です。

長年の習慣で、何かが擦れる音や動きに対して反射的に潤滑油(チェーンオイルや5-56など)を差したくなってしまうのがサイクリストの性ですが、ベルトドライブにおいてこれは自殺行為です。油分は砂やホコリを強力に吸着し、それらがヤスリのような研磨剤となってベルトの歯やスプロケットを急速に摩耗させてしまうからです。

ベルトドライブのDo & Don’t

  • ◎ やること(Do)
    基本は水洗いのみ。汚れがひどい場合は中性洗剤と柔らかいブラシで洗う。異音(鳴き)が気になる時だけ、Gates推奨の「シリコンスプレー(無溶剤タイプ)」を薄く塗布する。
  • ✕ やってはいけないこと(Don’t)
    チェーンオイル、グリス、浸透潤滑剤(Kure 5-56等)、パーツクリーナー(ゴムを劣化させる溶剤)の塗布。ベルトを強くねじったり、折り曲げたりする行為(中のカーボン繊維が折れます)。

生活が変わる3つの「解放」

実際にベルトドライブのある生活を始めると、走行性能云々以前に、自転車を取り巻く日常のストレスが消えていくことに気づきます。

  1. 「汚れ」からの解放
    黒い油汚れが存在しないため、純白のパンツやビジネススーツで乗っても、右足の裾が汚れる「チェーンタトゥー」の恐怖がありません。輪行や車載の際も、手や車内が汚れないのは想像以上に快適です。
  2. 「錆び」からの解放
    特に私が感動したのは冬場の運用です。金属チェーンにとって最悪の敵である「融雪剤(塩カル)」や、海岸沿いの「潮風」も、樹脂とカーボンでできたベルトには無効です。以前は雪道を走った後、凍える手で必死に洗車と注油をしていましたが、今では「帰宅してシャワーでサッと流しておしまい」です。
  3. 「時間」の解放
    これが現代人にとって最大のメリットかもしれません。メンテナンスに費やしていた時間を、純粋に走る時間や休息の時間に充てることができます。「走り出そうとしたらチェーンが錆びていてテンションが下がった」という事態も二度と起こりません。 もし今まさにチェーンのトラブルに悩まされているなら、 ロードバイクのチェーンが外れた時の原因と正しい直し方ガイド もあわせてチェックしておくと安心です。

ベルトドライブは、単なる駆動システムの違いを超えて、「自転車に乗るハードルを極限まで下げてくれるツール」だと言えるでしょう。忙しい毎日の移動手段として、これほど頼もしい相棒はいません。

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重いし遅い?坂道での走行性能検証

重いし遅い?坂道での走行性能検証
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「メンテナンスが楽なのは分かったけど、ベルトドライブはチェーンより抵抗があって重いのではないか?」

導入を検討する際、誰もが一度は抱くこの疑問。ネット掲示板やSNSでも長年議論されているテーマですが、実際に運用している私の結論は、「ゆっくり走る時はわずかに抵抗があるが、本気で踏み込む時はチェーンに負けない、むしろ効率が良い瞬間がある」というのが真実です。

ここでは、「物理的な摩擦抵抗」と「重量(重さ)」という2つの側面から、ベルトドライブの走行性能を徹底的に解剖してみましょう。

「208ワット」の境界線とプリロードのパラドックス

まず、抵抗感の正体についてです。これを理解するには、ベルトドライブ特有の「プリロード(初期張力)」という概念を知る必要があります。

金属チェーンは、ギアの歯にローラーが噛み合う構造上、たるんでいても駆動力を伝えられます。しかし、ベルトドライブは強いトルクがかかった際の「歯飛び(ラチェッティング)」を防ぐために、最初からパンパンに引っ張った状態でセットしなければなりません。Gates社の推奨値では、約30kg〜40kg(85ポンド)もの力で常に引っ張り続ける必要があります。

この強い張力が、ボトムブラケット(BB)やリアハブのベアリングに対して、常に横方向の負荷(ドラッグ)をかけ続けます。そのため、Friction Factsなどの第三者機関によるテストデータによれば、低出力時においては、チェーン駆動よりも約1ワット〜数ワット程度の摩擦損失が発生すると報告されています。

知っておきたい「効率の逆転現象」
しかし、面白いことにライダーの出力(ワット数)が上がると、この関係は逆転します。金属チェーンはトルクが増すとリンク間の金属摩擦が直線的に増大しますが、ベルトはその摩擦増加率が非常に緩やかだからです。

その分岐点(クロスオーバーポイント)は「約208ワット」と言われています。つまり、まったりポタリングしている時はチェーンの方が軽いですが、上り坂でグイグイ踏み込んでいる時や、全力で加速している時は、実はベルトドライブの方が駆動効率が良い可能性があるのです。

回転部分は実は軽い!「重さ」の正体

次に「重量」の問題です。「ベルトドライブ車は重い」とよく言われますが、これは半分正解で半分間違いです。

確かに、変速機そのものの重量は重くなります。ベルトドライブには外装変速機(ディレイラー)が使えないため、内装変速ハブ(AlfineやRohloffなど)を使いますが、これらは単体で1.5kg〜1.8kgほどの重量があり、一般的なディレイラーシステムの数倍の重さがあります。車体を持ち上げた時に「ズッシリ」と感じるのはこのためです。

しかし、走りの軽さを決める上で最も重要な「回転質量(Rotational Mass)」において、ベルトドライブは圧倒的なアドバンテージを持っています。

パーツ名重量特徴
Gates CDXベルト約80g 〜 90g驚異的に軽い。遠心力が小さい。
一般的なチェーン約250g 〜 300g金属の塊。回転時に遠心力が働く。

ご覧の通り、高速で回転し続けるベルト自体は、金属チェーンの約3分の1という軽さです。ホイールの外周部が軽いのと同じ理屈で、「漕ぎ出しの一歩目」や「信号待ちからの加速」は、車重の割に驚くほど軽快に感じられます。

「静寂」がもたらす速度感覚の違い

最後に、感覚的な部分ですが「音」の影響も無視できません。チェーン駆動のロードバイクは、加速時に「ジャララッ!」という金属音が鳴り、これがライダーに「速く走っている」という聴覚的なフィードバックを与えます。

対してベルトドライブは、どれだけ強く踏み込んでも「無音」です。あまりに静かなので、スピード感を感じにくく「進んでいない」と錯覚することがありますが、サイクルコンピューターを見ると意外と速度が出ている、という現象がよく起こります。

走行性能の結論

  • 平坦な巡航
    ベアリング抵抗により、チェーンよりわずかに不利(ただし体感できるレベルかは微妙)。
  • 登坂・加速
    高トルク域での効率逆転と、回転部分の軽さにより、チェーンと同等以上のパフォーマンスを発揮する。
  • 感覚
    「無音の加速」は、慣れるとチェーンには戻れないほど滑らかで上質な体験。

ツール・ド・フランスで1秒を争うのでなければ、この抵抗差がネガティブな要素になることはまずありません。むしろ、あの金属ノイズがない「完全な静寂」の中を滑るように進む感覚は、数値上の効率差以上の快感を私たちに与えてくれますよ。

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ベルトドライブのデメリットと異音

ベルトドライブのデメリットと異音
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ここまで、ベルトドライブがいかに素晴らしいかを熱弁してきましたが、光があれば影もあります。導入してから「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないよう、購入前に必ず知っておくべきネガティブな側面や、特有のトラブルについても包み隠さずお伝えします。

ベルトドライブは「手がかからない」システムですが、一度トラブルが起きると「手が出せない(または直しにくい)」システムでもあります。そのリアルな実態を見ていきましょう。

最大の壁:フレームの「スプリット」問題

ベルトドライブ化を阻む最大にして最強の壁、それが「フレームの適合性」です。

チェーンであれば、チェーン切りという工具を使ってピンを抜き、切断した状態でフレームに通してから再び繋ぐことができます。しかし、カーボンベルトは工場で一体成型された強固な「輪っか(ループ)」であり、切断したり繋いだりすることが物理的に不可能です(切ったら二度と繋がりません)。

そのため、ベルトをリア三角(フレームの後ろ側の三角形)の内側に通すためには、フレーム自体に扉のような開閉機構(スプリット)が必要になります。シートステーやエンドの一部がボルトで外れる構造になっていなければ、絶対に装着できません。これが、一般的なロードバイクをポン付けでベルト化できない最大の理由です。

運用前に覚悟すべき3つの「面倒くささ」

専用フレームを手に入れたとしても、日々の運用にはチェーン駆動とは異なる「不便さ」が付きまといます。

購入前にチェック!3つの注意点

  • 1. パンク修理がハードモード
    これが一番切実です。内装変速ハブを使用している場合、ホイールの脱着はクイックリリースのようにワンタッチではいきません。「変速ワイヤーのジョイントを外す」→「ホイールナットをレンチで緩める」→「ベルトのテンションを緩めて外す」という手順が必要になります。雨の日の路上でやるには相当なストレスになるため、パンクしにくいタイヤ(Schwalbe Marathon Plusなど)を履かせて、リスク自体を減らすのが定石です。
  • 2. パーツがすぐ手に入らない
    旅先でベルトが切れたり、スプロケットが破損したりしても、普通の自転車屋さんには在庫がありません。ホームセンターや量販店でも扱っていないため、修理には海外通販や代理店からの取り寄せが必要になり、数週間乗れなくなるリスクがあります。長旅をする際は、予備ベルトの携帯が必須です。
  • 3. ギア比の変更が不自由
    「もう少し軽いギアが欲しいな」と思っても、カセットスプロケットのように気軽に歯数を変えることができません。専用スプロケットは高価(1枚1万円以上することもザラです)で種類も少ないため、最初のギア比設定が非常に重要になります。

「キュルキュル音」の正体と正しい対処法

ベルトドライブは無音に近い静寂性が売りですが、条件が悪くなると「キュルキュル」「ギュッギュッ」という特有の異音(Squeak)が発生することがあります。主な原因は、「極度の乾燥」「細かいホコリの付着」「ベルトライン(噛み合わせ)のズレ」のいずれかです。

この音が鳴り始めた時、チェーンの癖で絶対にやってはいけないことがあります。

異音対策の鉄則:注油は厳禁!

「Kure 5-56」や「チェーンオイル」は絶対に使わないでください。

これらの油分を使うとその場では音が消えますが、すぐに砂埃を吸着して真っ黒な研磨剤のようなヘドロ状になります。これがベルトの歯とスプロケットをヤスリのように削り取り、寿命を一気に縮めてしまいます。また、溶剤が含まれている潤滑剤はゴム素材そのものを劣化・膨張させる原因にもなります。

正しい対処法は以下の通りです。

  1. 水洗いをする
    まずは水をかけて、歯に付着した細かいホコリを洗い流してください。軽度な鳴きならこれだけで止まります。
  2. シリコンスプレーを塗布
    水洗いで直らない場合は、潤滑が必要です。ただし、使うのはGates社が推奨する「シリコンスプレー」に限ります。ホームセンターで購入する場合は、ゴムを傷めない「無溶剤タイプ」を選んでください。これをベルトの歯面に薄く吹くことで、素材を侵さずに滑りを良くし、異音を解消できます。
  3. アライメント調整
    それでも直らない場合は、リアホイールが斜めに取り付けられていないか、ベルトラインを確認しましょう。

異音はベルトからの「汚れているよ」「張りすぎだよ」というサインです。オイルで誤魔化すのではなく、根本原因を取り除くことが長く付き合うコツですよ。

(出典:Gates Carbon Drive『Owner’s Manual – Handling and Tension』※公式マニュアルにて適切な取り扱い方法が確認できます)

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既存ロードバイクを改造できるか

既存ロードバイクを改造できるか
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「今持っているお気に入りのクロモリロードや、昔から乗っているアルミのロードバイクを、ベルトドライブに改造したい!」

このような熱い相談を、読者の方からメールやSNSで本当によくいただきます。長年連れ添った愛車を活かしたい、その愛着のあるフレームで新しいシステムを試したいという気持ち、痛いほど分かります。私自身、機材をいじるのが大好きなので、その「ロマン」は否定したくありません。

しかし、残念ながら現実的な結論を最初にお伝えしなければなりません。一般的なロードバイクの99%は、そのままではベルトドライブ化することができません。

なぜここまで断言できるのか。それには、自転車の構造に関わる「3つの物理的な壁」が存在するからです。ここでは、なぜあなたのロードバイクがベルトを受け入れてくれないのか、その技術的な理由を詳しく解説します。

第1の壁:トポロジー(幾何学)の問題

最も単純かつ絶対的な理由がこれです。自転車のフレームの後ろ半分(リアトライアングル)は、シートチューブ、チェーンステー、シートステーの3本のパイプで構成された「閉じた三角形」をしています。

一方で、従来のチェーンは「チェーン切り」という工具を使ってピンを抜き、一本の紐状にしてからフレームに通し、再び繋ぐことができます。しかし、カーボンベルトは工場で製造された時点で「切れ目のない完全な輪(ループ)」です。これを切断して繋ぎ直す技術は存在しません。

つまり、知恵の輪と同じ理屈です。「閉じた輪(ベルト)」を「閉じた三角形(フレーム)」の中に通すには、フレーム側のどこかを物理的に切断して、ゲート(入り口)を作ってあげる必要があります。通常のロードバイクにはこのゲートが存在しないため、装着自体が不可能なのです。

第2の壁:テンション(張力)調整の問題

「じゃあ、魔法を使ってベルトを通せた」と仮定しましょう。次に立ちはだかるのが、「どうやってベルトを張るのか?」という問題です。

一般的なロードバイクの車輪を取り付ける部分(ドロップアウト)は、「バーチカルドロップアウト(Vertical Dropouts)」と呼ばれる形状をしています。これは、ホイールを垂直にはめ込むだけで定位置に固定される便利な仕組みですが、前後に位置を動かすことができません。

チェーン駆動の場合、チェーンの長さが変わったりたるんだりしても、「リアディレイラーのバネ」が自動的にテンションを調整してくれます。しかし、ベルトドライブにはディレイラーがありません。そのため、以下のいずれかの方法で、フレーム側でテンションを掛ける必要があります。

機構一般的なロードバイクベルト対応フレーム
ドロップアウト形状バーチカル(垂直固定)
ホイール位置が動かせないため、ベルトを張ることができない。
スライディング / ホリゾンタル
ホイールを後ろに引くことでベルトをパンパンに張ることができる。
BB(ボトムブラケット)ねじ切り / 圧入(中心固定)
クランク軸の位置は動かない。
エキセントリックBB(EBB)
BB軸を偏心(回転)させて前方にずらし、ベルトを張ることができる。

つまり、普通のロードバイクには「ベルトを通す入り口」もなければ、「ベルトを引っ張る機能」もないのです。この二重苦により、改造は事実上不可能となっています。

第3の壁:フレーム剛性の問題

あまり語られませんが、実はこれが走行性能に関わる重要なポイントです。ベルトドライブはチェーンと異なり、フレームの「横方向のたわみ」に対して非常にシビアです。

軽量なクロモリフレームや、古いアルミフレームなどは、ペダルを強く踏み込んだ際にチェーンステーがわずかに外側にたわむように設計されています(これが乗り心地の良さにも繋がります)。チェーンはこのたわみを許容しますが、柔軟性のないカーボンベルトの場合、フレームがたわむとスプロケットとの噛み合わせがズレてしまい、「バチン!」と大きな音を立てて歯飛び(ラチェッティング)したり、最悪の場合はベルトが外れたりする危険があります。

ベルトドライブ専用設計のフレームは、このたわみを抑えるためにリア周りの剛性を意図的に高く設計しています。既存のロードバイクを無理やりベルト化できたとしても、この剛性不足により、まともに走れない可能性が高いのです。

フレーム切断加工のリスクと現実

世の中には、鉄(クロモリ)フレームのシートステーを切断し、ボルトで継ぎ手(カプラー)を溶接して、無理やりベルト対応に改造するカスタム業者も存在します。

改造手術をおすすめしない理由

  • 強度の低下
    溶接の熱によってパイプの熱処理が変化し、強度が落ちたり、破断のリスクが高まったりします。高速走行するロードバイクにおいて、フレーム破損は命に関わります。
  • 保証の消滅
    当然ながら、メーカーの品質保証は一切受けられなくなります。
  • コストの増大
    切断、溶接、再塗装、そして専用パーツの調達を含めると、新しいフレームが一本買えるほどの費用がかかります。

愛着のあるフレームを活かしたい気持ちは山々ですが、「安全性」と「コスト」、そして「走行性能」を天秤にかけると、「基本的には、最初からベルトドライブに対応した設計のフレームを買うべきである」というのが、私の偽らざる本音であり、最も誠実なアドバイスです。

…ですが、たった一つだけ。フレームを切断せず、高額な加工もせずに、既存のロードバイクをベルト化できる「裏技」のようなキットが存在します。次のセクションでは、その唯一の希望について詳しく解説しましょう。

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後付けキットVeerの仕組みと費用

後付けキットVeerの仕組みと費用
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「フレームが対応していないのは理屈では分かった。でも、どうしてもこの愛車をベルト化したいんだ!」

そんな執念深いカスタマイザーの皆様、お待たせしました。世界で唯一とも言える「既存フレームを無加工でベルトドライブ化する」ための希望の光が存在します。それが、米国のベンチャー企業Veer Cycle社が開発した「Veer Split Belt Pro(ヴィーア・スプリットベルト・プロ)」です。

この製品は、文字通り「最後の手段」として機能しますが、導入には高額な費用と高い技術的ハードル、そしてある種の「覚悟」が必要です。ここでは、その仕組みとリアルな導入コストについて、シビアな視点で解説します。

逆転の発想:「フレーム」ではなく「ベルト」を切る

通常、ベルトドライブを導入するには、閉じた輪であるベルトを通すためにフレーム側を分割(スプリット)する必要がありました。しかし、Veerの発想は真逆です。

「フレームが切れないなら、ベルトの方を切ってしまえばいいじゃない」

Veerのベルトは、最初から切断された一本の紐の状態で販売されています。これをフレームのリア三角に通した後、接合部分の歯を重ね合わせ、専用のステンレス製リベットピンをハンマーで貫通させて「カシメる」ことで、強固な輪っかにするという仕組みです。これにより、理論上はあらゆるダイヤモンドフレームの自転車にベルトを装着することが可能になりました。

覚悟が必要な「リアルな導入コスト」

「これなら私のバイクも!」と期待が高まりますが、まずは電卓を叩いて現実を見てみましょう。Veerは決して安いカスタムではありません。昨今の円安と輸送費高騰を考慮すると、導入総額は驚くべき金額になります。

項目費用の目安備考
基本キット代金
(ベルト+前後スプロケット)
約380〜450ドル
(約57,000円〜68,000円)
ギア比やクランク規格により変動します。
専用リベット工具約30ドル
(約4,500円)
これがないと接合できません。必須です。
国際送料約50〜80ドル
(約7,500円〜12,000円)
米国からの発送になります。
消費税・通関手数料約4,000円〜6,000円日本国内での受け取り時に徴収されます。
テンショナー代金約8,000円〜15,000円別途購入が必要です(後述)。
合計目安約80,000円 〜 105,000円※パーツ代のみの概算です。

いかがでしょうか。パーツ代だけで、そこそこのクロスバイクが新車で買えてしまう金額になります。さらにショップに作業を依頼すれば、工賃も加算されます。

乗り越えるべき「2つの技術的障壁」

金銭的な問題をクリアしても、次に技術的な壁が立ちはだかります。特に深刻なのが「テンション調整」「施工リスク」です。

1. テンション問題と見た目のジレンマ

前のセクションで解説した通り、通常のロードバイクには「ベルトを引っ張る機構」がありません。Veerを導入してもこの物理法則は変わらないため、以下のどちらかの方法でベルトを張る必要があります。

  • ベルトテンショナーの追加
    リアディレイラーの取り付け穴に、プーリーでベルトを強制的に押さえつける装置(テンショナー)を装着します。最も安価で手軽ですが、これをつけると見た目がシングルスピードのようにスッキリせず、ガチャガチャした印象になります。「シンプルさ」を求めてベルト化したのに、部品が増えるという矛盾を抱えることになります。
  • エキセントリックBBへの換装
    Phil Woodなどが販売している、通常のねじ切りBBシェルに取り付け可能なエキセントリックBB(約2〜3万円)を使用します。見た目はスッキリしますが、相性問題が出やすく、音鳴りの原因になることもあります。
2. 一発勝負のリベット打ち込み

Veerの接合プロセスは非常にシビアです。ベルトの歯の位置をミクロン単位で合わせ、専用ピンをハンマーで垂直に打ち込む必要があります。もし少しでもズレたり、ピンが曲がったりすれば、その高価なベルトは強度不足となり、走行中に破断する危険物と化します。「失敗したらベルト(約3万円相当)がゴミになる」というプレッシャーの中での作業は、DIY慣れしている人でも冷や汗ものです。

結論:Veerは誰のためのもの?

コスト、手間、リスクを総合的に判断すると、Veerは「手軽にベルト化したい人」向けではありません。「どれだけ金と手間がかかっても、この特定のフレームでベルトドライブを実現することにロマンを感じる」という、強い愛着と執念を持った上級者向けの最終手段と考えるべきでしょう。

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おすすめのロードバイクとベルトドライブ製品選び

おすすめのロードバイクとベルトドライブ製品選び
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ここからは、「改造は難しそうだしリスクも高いから、最初からベルトドライブに対応した完成車やフレームを買いたい」という堅実な方に向けて、具体的な製品選びのガイドをお届けします。海外ブランドが中心となりますが、日本国内での入手性や、よくある「通学用自転車」との違いなど、購入前に知っておくべきリアルな情報です。

  • 人気メーカーの完成車と日本での価格
  • ブリヂストンのアルベルトは代用可能?
  • 中古フレームで自作する際の注意点
  • ドロップハンドルの内装変速化パーツ
  • ロードバイクのベルトドライブ導入まとめ
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人気メーカーの完成車と日本での価格

人気メーカーの完成車と日本での価格
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「改造が難しいなら、最初からベルトドライブが付いているロードバイクを買えばいいじゃない」

至極もっともな意見です。しかし、いざ探してみると、その選択肢の少なさに愕然とするはずです。「ドロップハンドル」で「内装変速」、そして「ベルトドライブ」という3つの条件を満たす完成車は、自転車市場全体を見渡しても「ユニコーン」並みに希少な存在だからです。

ここでは、そんな砂漠の中のオアシスとも言える、日本から購入可能な数少ない有力モデルと、それを手に入れるためのリアルな費用感について解説します。

米国からの刺客:Priority Bicycles “Apollo”

現在、世界中のベルトドライブ愛好家から「最適解」として最も高い評価を得ているのが、ニューヨークを拠点とするブランドPriority Bicycles(プライオリティ・バイシクルズ)が販売するグラベルロード、「Apollo(アポロ)」です。

このバイクの何が凄いかというと、私たちが苦労して改造しようとしている「理想のスペック」が、最初から全てパッケージ化されている点です。

Priority Apolloの完璧なスペック

  • 駆動系:Gates CDXベルト + Shimano Alfine 11速(内装ハブ)
  • シフター:Microshift製ドロップハンドル用シフター(ここが重要!)
  • フレーム:軽量アルミフレーム + カーボンフォーク
  • タイヤ:40mm幅の太いタイヤも履けるグラベル仕様

特筆すべきは、ドロップハンドルでAlfineハブを操作するためのシフターが標準装備されていることです。箱から出して組み立てれば、すぐにメンテナンスフリーのロングライドに出かけられます。

日本からの購入方法とコスト

残念ながら日本に正規代理店はありませんが、公式サイトは国際発送(International Shipping)に対応しており、英語フォームに住所を入力するだけで個人輸入が可能です。

項目費用の目安解説
車両本体価格約1,900ドル〜2,000ドル
(約28万〜30万円)
為替レートにより大きく変動します。
国際送料約250ドル〜350ドル
(約4万〜5万円)
FedExやUPSなどの航空便で届きます。時期により変動あり。
関税0円(無税)完成車の輸入に関税はかかりません(WTO協定)。
輸入消費税約20,000円〜30,000円受け取り時に支払います。個人輸入の特例計算(商品代金の60%×10%)が適用されるのが一般的です。
総支払額目安約35万〜40万円※1ドル=150円換算の場合

決して安くはありませんが、バラバラにパーツを集めて組む手間と工賃を考えれば、十分にリーズナブルな価格設定だと言えます。

ドイツの巨人:Canyon “Commuter”

もう一つの有力な選択肢が、ドイツの直販専門ブランドCanyon(キャニオン)です。特に「Commuter(コミューター)」シリーズの上位モデル(Commuter 7や8など)には、Alfine 11速ハブとGatesベルトが搭載されています。

こちらは基本仕様が「フラットバーハンドル(クロスバイク形状)」ですが、以下の点で大きなメリットがあります。

Canyonを選ぶメリット

  • 購入の安心感
    日本語サイトが完全に整備されており、日本円で決済可能。京都にジャパンサービスセンターがあり、購入後のサポートも手厚いです。
  • デザイン性
    ケーブル類が完全に内装された近未来的なデザインは、所有欲を強烈に満たしてくれます。
  • 送料が固定
    梱包箱代と配送料が決まっており(約2万円前後)、コスト計算が容易です。

上級者の中には、このCommuterを購入し、ハンドルをドロップハンドルに交換して「ドロップ化」するカスタムを楽しむ猛者もいます。ただし、ブレーキやシフターの全交換が必要になり、追加で5万円〜10万円ほどのコストがかかるため、茨の道であることを覚悟してください。

(出典:Priority Bicycles公式『Priority Apollo Product Page』※スペック詳細や最新価格はこちらで確認できます)

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ブリヂストンのアルベルトは代用可能?

ブリヂストンのアルベルトは代用可能?
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日本国内で「ベルトドライブの自転車」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのはブリヂストンのベストセラー通学車「アルベルト」ではないでしょうか。20年以上の歴史を持ち、その耐久性は折り紙付きです。

読者の方からもよく「アルベルトを改造してドロップハンドルにできないか?」「アルベルトのスポーツモデル(アルベルトeなど)はロードバイクの代わりとしてツーリングに使えるか?」という質問をいただきます。安価で手に入りやすく、どこでも修理できそうなイメージがあるから当然ですよね。

しかし、結論から申し上げますと、「街乗り最強のコミューターにはなるが、ロードバイクのようなスポーツ走行やロングライドには全く向かない」というのが正直な現実です。

なぜ「代用」が難しいのか。そこには、同じベルトドライブでも決定的な「設計思想の違い」が存在するからです。

決定的な違い:「伸びるベルト」と「伸びないベルト」

最大の違いはベルトそのものの特性にあります。スポーツ用に使われるGates社のカーボンベルト(CDXなど)は、高強度のカーボン心線を入れることで「絶対に伸びないこと」を最優先に設計されています。これにより、ライダーがペダルを踏み込んだ力が瞬時に後輪に伝わり、ダイレクトな加速感を生み出します。

一方、アルベルトに採用されているブリヂストン独自の「フローティングベルトドライブ」は、真逆のアプローチをとっています。こちらは「あえてわずかに伸びる(たわむ)こと」で、漕ぎ出しのショックを和らげ、ソフトで優しい乗り心地を実現するように設計されているのです。

アルベルトでスポーツ走行をした時の違和感

  • 力の逃げ
    ロードバイクのように立ち漕ぎ(ダンシング)で急加速しようとすると、ベルトがグニャッとたわんで力がワンテンポ遅れて伝わる感覚(ダイレクト感の欠如)があります。
  • 高ケイデンスへの不適応
    足を高速で回転させるようなペダリングには追従しきれず、リズムが取りにくいと感じることがあります。

つまり、アルベルトは「ゆっくり、優しく走る」ためには最高ですが、「速く、遠くへ走る」ための機材ではないのです。

重量の壁と改造のハードル

次に立ちはだかるのが「重量」と「ジオメトリ(車体寸法)」の問題です。

ロードバイクが装備重量で8kg〜10kg程度であるのに対し、アルベルトは頑丈なフレーム、泥除け、サークル錠、スタンド、ハブダイナモなどをフル装備しているため、車体重量は約19kg〜20kgにもなります。これはロードバイク2台分以上の重さです。この重量で峠道を登ったり、100km走ったりするのは、トレーニングを超えてもはや「苦行」です。

項目解説
ハンドルの互換性アルベルトのハンドルクランプ径やステム構造はシティサイクル規格です。ドロップハンドルを付けるにはステム変換など大掛かりなパーツ交換が必要になります。
ポジションフレーム設計が「上体を起こして乗る」ことを前提にしているため、無理にドロップハンドルを付けても、ハンドル位置が近すぎて窮屈なポジションになりがちです。
内装変速の操作アルベルトの内装変速(3段または5段)に対応したドロップハンドル用シフターは市販されていません。変速操作をどうするかという難問にぶつかります。

結論:アルベルトは「最強の実用車」である

ここまで否定的なことばかり書きましたが、それはあくまで「ロードバイクの代わりになるか?」という問いに対してです。視点を変えて、「片道10km以内の通勤・通学」という用途に限定すれば、アルベルトは世界中探しても敵がいないほど優秀な自転車です。

アルベルトを選ぶべき人

  • スーツや制服で汚れを気にせず乗りたい。
  • 雨の日も風の日もノーメンテナンスで使い倒したい。
  • 駐輪場での盗難リスクや、スタンドがない不便さから解放されたい。
  • 「速さ」よりも「便利さ」と「頑丈さ」が最優先。

もしあなたが求めているのが「週末のサイクリングを楽しむ趣味の道具」なら、高くてもGatesベルト搭載のスポーツ車を買うべきです。しかし、「毎日の移動を楽にする道具」を求めているなら、アルベルト(特に電動アシストのアルベルトe)こそが、賢く、そして最もコストパフォーマンスの高い選択肢になるでしょう。

(出典:ブリヂストンサイクル『アルベルト 製品情報』※その完成されたコミューターとしてのスペックはこちらで確認できます)

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中古フレームで自作する際の注意点

中古フレームで自作する際の注意点
ペダルノート・イメージ

「完成車は高いし、仕様も妥協したくない。自分の好きなパーツを一から集めて組み上げたい!」

そんな「バラ完」派のあなたにとって、ベルトドライブ対応のフレームセットを探す旅は、宝探しのようなワクワク感と、地雷原を歩くような緊張感が同居する冒険になります。日本国内において、このジャンルで不動の人気を誇り、最も現実的な選択肢となるのが、米国のSoma Fabrications(ソーマ)がリリースしている名作フレーム「Wolverine(ウルヴァリン)」です。

Wolverineは「モンスタークロス」と呼ばれる多目的フレームで、太いタイヤが入るクリアランス、しなやかなTange Prestigeパイプ、そして何より「ベルトを通すための分割部(スプリット)」「チェーンの張りを調整できるスライディングドロップアウト」を標準装備しています。日本国内でもBlue Lugなどの有名プロショップで取り扱いがあり、比較的手に入りやすいのも魅力です。

しかし、ヤフオクやメルカリなどの中古市場でこのフレームを探す際には、一つだけ「致命的な落とし穴」が存在します。これを知らずにポチると、数万円をドブに捨てることになりかねません。

最大の罠:「Type-A」と「Type-B」の違い

Wolverineはロングセラーモデルゆえに、何度もマイナーチェンジを繰り返しています。特に注意が必要なのが、v3.0〜v4.0あたりの世代で展開されていた「Type-A」と「Type-B」という2つのバリエーションです。

タイプ名仕様ベルトドライブ適性
Type-A伝統的なノン・ベルト仕様。
フレームの分割機構がありません
× 不可
(ただの頑丈なクロスバイクになります)
Type-Bベルトドライブ対応仕様。
右シートステーに分割部があります。
◎ 最適
(これを探してください!)

恐ろしいことに、この2つはパッと見のデザインやロゴ、カラーリングが全く同じであるケースが多いのです。出品者が詳しくない場合、説明文に「ベルト対応」と書かれていなくても、実はType-Aだったという事例が後を絶ちません。

写真で判定!「スプリット」の見分け方

「安く手に入れたと思ったら、ベルトが通せないモデルだった!」という悲劇を避けるためには、必ず「右側のシートステー(後ろの三角形の右上のパイプ)」の接合部を確認する必要があります。

ベルト対応フレームには、リアエンド(車軸部分)のすぐ近くに、フレームを分割するためのボルト止めされた継ぎ目(スプリット)が存在します。購入前には必ず出品者に質問するか、該当箇所の拡大写真を要求して、この継ぎ目が物理的に存在するかを目視で確認してください。

中古フレーム購入時のチェックリスト

  • スプリットの有無
    右シートステーに分割用のボルトがあるか?
  • スライディングドロップアウトの状態
    車軸を固定するプレート部分は消耗品です。固定ボルトが舐めていないか、プレートが歪んでいないか確認しましょう(交換パーツは入手可能です)。
  • エンド幅の規格
    年式によって、135mmクイックリリース仕様と、142mmスルーアクスル仕様が混在しています。手持ちのホイール(内装ハブ)が使えるか要確認です。

Somaに限らず、All-City(Super Professionalなど)や他のブランドの中古フレームを探す際も、必ずメーカーのアーカイブや公式スペック表に「Belt Drive Compatible(ベルトドライブ対応)」と明記されているかを確認するのが鉄則です。雰囲気だけで判断するのは絶対にやめましょう。

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ドロップハンドルの内装変速化パーツ

ドロップハンドルの内装変速化パーツ
ペダルノート・イメージ

ロードバイクをベルトドライブ化する上で、技術的に最も悩ましく、そして最も情報が錯綜しているのが「シフター(変速レバー)」の問題です。多くの人がここで頭を抱えます。

「普通のロードバイクについているブレーキと変速が一体になったレバー(STIレバー)で、そのまま内装変速ハブを動かせないの?」

答えはNoです。Shimano AlfineやRohloffといった主要な内装変速ハブは、基本的にフラットバー(真っ直ぐなハンドル)での使用を前提に設計されており、ロード用コンポーネントとはワイヤーを引く量(ケーブルプルレシオ)が全く異なります。そのため、互換性がなく、そのまま繋いでもまともに変速しません。

しかし、諦める必要はありません。世界中の変態的…いえ、熱心なサイクリストとパーツメーカーが、この「ミッシングリンク」を埋める解決策を開発しています。ここでは、現在主流となっている3つのアプローチと、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。

1. ブルジョワかつ最強の解:Shimano Di2電動化

予算に余裕があるなら、最も確実で快適なのが「電動変速(Di2)」の導入です。実はShimano Alfineには、電動変速に対応したモデル(SG-S7051など)が存在します。

これと、ロードバイク用のDi2デュアルコントロールレバー(ST-R785やGRX Di2など)を組み合わせることで、夢の「ドロップハンドル × 内装変速」が純正パーツのみで実現します。

Di2化のメリット・デメリット

  • ◎ 操作感が最高
    マウスをクリックするような軽いタッチで、確実にギアが変わります。ワイヤーの伸びや摩擦抵抗がないため、メンテナンス頻度も激減します。
  • ◎ 情報表示
    サイクルコンピューターや専用ディスプレイと連携すれば、「今何速に入っているか」を画面で確認できます(内装変速は目視でギア位置が分からないため、地味に便利です)。
  • ✕ コストが高い
    ハブ、レバー、バッテリー、ジャンクション、ケーブル類を揃えると、パーツ代だけで10万円コースです。
  • ✕ 配線の手間
    バッテリーをシートポストに仕込んだり、エレクトリックケーブルをフレーム内に通したりと、組み付けの難易度は高めです。

2. コスパ最強の優等生:Microshift互換レバー

「電動にするほどの予算はないけれど、手元でカチカチ変速したい」という方に最適なのが、台湾のパーツメーカーMicroshift(マイクロシフト)が販売している互換レバーです。

具体的には、以下のモデルがShimano Alfineに対応しています。

  • SB-N110:Alfine 11速用
  • SB-N080:Alfine 8速用

見た目は旧型のShimano STIレバーにそっくりで、ブレーキレバー自体を横に倒して変速する操作方法も似ています。価格もセットで3〜4万円程度と、Di2に比べればリーズナブルです。Priority Apolloなどの完成車にも採用されている、現在最もメジャーな解決策です。

ただし、構造上ワイヤーを大きく巻き取る必要があるため、変速時のレバーのストローク(押し込み量)が大きく、引き心地も「重め」です。小指一本で変速、とはいかない点に注意が必要です。

3. 泥沼の玄人カスタム:GeBla Rohbox & その他

ここからは上級者向けの世界です。特に、ドイツが生んだ究極の内装ハブ「Rohloff Speedhub(ローロフ・スピードハブ)」を使いたい場合、純正のドロップハンドル用シフターが存在しません。

そこで登場するのが、「GeBla Rohbox(ゲブラ・ローボックス)」という変換アダプターです。これはハブ側の変速ユニットを交換し、SRAM製のDoubleTapレバー(の中身を改造したもの)で2本のワイヤーを引くことで変速させるという、非常にマニアックな製品です。

また、もっとシンプルで安価な方法として、「バーエンドコントローラー(バーコン)」を使う手もあります。JtekなどのメーカーがAlfine対応のバーコンを出しています。ハンドルの端に付けるため、変速のたびにブレーキから手を離す必要がありますが、構造が単純で壊れにくいため、世界一周サイクリストなどに愛用者が多いです。

方法コスト快適性おすすめな人
Shimano Di2最高予算があり、完璧な操作感を求める人。
Microshiftメカニカルな操作感が好きで、コスパ重視の人。
バーコン旅バイクを作りたい人。クラシックな見た目が好きな人。

どの方法を選ぶにしても、パーツの規格やワイヤーの取り回しには専門知識が必要です。自信がない場合は、内装変速のカスタムに強いプロショップ(Blue LugやCirclesなど)に相談することを強くおすすめします。

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ロードバイクのベルトドライブ導入まとめ

ロードバイクのベルトドライブ導入まとめ
ペダルノート・イメージ

ここまで、かなりディープでマニアックな世界にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。最後に、これまでの話を総括して、あなたが「ベルトドライブ」という選択肢を選ぶべきかどうか、背中を押したいと思います。

正直に申し上げます。ロードバイクのベルトドライブ化は、「万人受けするカスタム」ではありません。

重量を1gでも軽くしたいヒルクライマーや、コンマ1秒を競うレーサーにとって、ベルトドライブと内装変速のシステムは「重くて非効率な機材」でしかないでしょう。また、導入コストの高さや、フレーム選びの制約、パーツ入手の難易度など、乗り越えるべきハードルが山のようにあるのも紛れもない事実です。

しかし、それでも私がこのシステムを愛してやまないのには理由があります。

カタログスペックには載らない「3つの価値」

  • 精神的な解放
    「またチェーン掃除しなきゃ」「雨に降られたら錆びるかも」という強迫観念から完全に解き放たれます。どんな天気でも、どんな服装でも、思い立ったらすぐに走り出せる自由さは、一度味わうと戻れません。
  • 感覚的な没入感
    金属音が一切しない「無音の走行感」。耳に入ってくるのは風切り音とタイヤのロードノイズだけ。この静寂さがもたらす景色への没入感は、ベルトドライブでしか味わえない特別な体験です。
  • 道具としての美学
    シンプルで機能的、そしてタフ。飾り気を削ぎ落とした工業製品としての美しさは、所有する喜びを深く満たしてくれます。

雨の日も風の日も走るタフな通勤ライダーにとって、あるいは他人とは違う独自の機材美を追求するエンスージアストにとって、ベルトドライブは間違いなく「最高の相棒」になるはずです。 日常の通勤や街乗りでの快適性をさらに高めたい場合は、 ロードバイク街乗りカスタムの全貌!費用とおすすめパーツを徹底解説 も参考にしてみてください。

「速さ」よりも「質」を。「効率」よりも「快適さ」を。そして何より、「人と同じ」よりも「ユニーク」であることを恐れないあなたなら、きっとこの泥沼…いえ、素晴らしい世界の住人になれる資質があります。

もし少しでも心が動いたなら、ぜひ一歩踏み出して、あなただけの特別な一台を検討してみてください。チェーンの油汚れと一緒に、古い常識を捨て去る時が来たのかもしれません。きっと、今までの自転車観がガラリと変わる、静かで新しい世界が待っていますよ。

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